第20章

病院を出たとき、ちょうど外は雨だった。大島莉理は傘を持っていない。いったん病院へ戻って雨宿りしようかと思った、その瞬間――見慣れたロールス・ロイスが路肩に停まっているのが目に入った。

運転手がドアを開ける。手には黒い傘。

「若奥様、お乗りください」

大島莉理は変に遠慮などせず、そのまま車に乗り込んだ。

後部座席では田中辰哉がノートパソコンに目を落とし、仕事の処理をしているらしい。邪魔をする気になれず、莉理はドア側の席で黙って座ったまま、雨音だけを聞いていた。

先に口を開いたのは田中辰哉だった。

「進捗は?」

大島莉理は一拍置いて答える。

「順調です。安心してください。私は負け...

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